買値より3,000万円高く売れた。
それでも売却より保有をおすすめした理由
「今なら高く売れます」——正しいこともあります。
ただ私は「売った後、その資金は今以上の価値を生むか」で考えます。
買値より約3,000万円高い購入希望——普通なら「十分利益が出る」と考える場面です。しかし私は「あと5年保有したらどうなるか」で考えました。家賃はまだ上げられ、NOIは高く、修繕リスクは小さく、都市計画の将来性もある。売却益より、その後のトータルリターンが大きいと判断し、保有をおすすめした事例です。
売却益3,000万円。それでも、私は売りませんでした。
不動産会社に相談すると「今が高く売れるので売却しませんか」という提案を受けることがあります。それが正しいケースもあります。しかし私は必ず「売った後、その資金は今の物件以上の価値を生むのか」という視点で考えます。今回は、実際に売却をおすすめしなかった事例です。
購入価格より約3,000万円高い売却提案
江東区にあるデザイナーズ一棟マンション。2020年築の築浅物件です。人気エリアで、購入当時も利回りは5%を切る価格帯でした。その後コロナ禍を経て都心不動産価格は大きく上昇。購入価格より約10%、金額にして約3,000万円高い価格で購入したいという話が入ってきました。
普通に考えれば「十分利益が出る」。そう考えても不思議ではありません。
(確定)
- 利益は今すぐ確定する
- ただし、その先は生まない
- 再投資先の確保が課題
トータルリターン
- 家賃はまだ上げられる
- NOIが高い(約1,600万/年)
- 修繕リスクは小さい
- 都市計画の将来性
管理していたから、見えていたこと
この物件は当社で管理をお任せいただいていました。そのため収支だけでなく、実際の運営状況を日々見ていました。入居者が退去するたびに周辺相場を確認しながら募集条件を見直し、結果として一部屋あたり平均約8,000円ずつ家賃を上げながら成約していました。まだ家賃の成長余地があり、資産価値も一緒に伸びている状態だったのです。
NOIは年間約1,600万円
この物件の年間NOIは、固く見積もっても約1,600万円。もちろん空室も発生し、家賃帯が高いこともあり入居者の入れ替わりは一定数あります。ただ、驚いたのは退去後の部屋の状態でした。ほとんどの部屋が非常にきれいで、クリーニングは行うものの「本当に住んでいたのだろうか」と思うほど丁寧に使われている部屋も少なくありませんでした。
デザイナーズだからこその入居者層
これは家賃帯だけの問題ではないと思っています。むしろ、このデザイナーズマンションというコンセプトに共感して入居される方が、建物を大切に使ってくださる傾向があったのではないかと感じています。建物がきれいに使われれば原状回復費用も抑えられ、結果としてオーナーの利益にもつながります。
収益不動産は、家賃だけではありません。
入居者属性も、大きな資産です。
大規模修繕は、まだ先
さらに2020年築ということもあり、外壁や防水などの大規模修繕はまだ当面必要ありません。築30年を超えた物件では数千万円規模の修繕を考えなければならないケースもありますが、この物件はまだその時期ではありません。つまり、しばらくは高いNOIを維持しやすい状態でした。
将来の都市計画も、追い風
もう一つ大きかったのが、周辺の都市計画です。まだ実施まで時間はありますが、約10年後を目安に都市計画事業が予定されていました。都市計画がすべて資産価値の上昇につながるとは限りません。しかし街が整備され利便性が向上すれば、賃料や資産価値へプラスに働く可能性があります。長期保有を考える上では、こうした将来性も重要な判断材料でした。
保有をおすすめした、4つの根拠
家賃はまだ上げられる
退去のたびに増額成約。成長余地が残る。
NOIが高い
固く見て年間約1,600万円。入居者属性も良好。
修繕リスクが小さい
2020年築。大規模修繕はまだ当面先。
都市計画の将来性
約10年後に事業予定。利便性向上への期待。
売却益3,000万円より、その後の利益
もちろん3,000万円の売却益は魅力的です。しかし私が考えたのは「あと5年間保有したらどうなるか」。家賃はまだ上げられる。NOIは高い。修繕リスクは小さい。将来の街づくりにも期待がある。そう考えると、現時点で売却するより最低でもあと5年程度は保有した方が、トータルリターンは大きい可能性が高いと判断しました。
売却は、ゴールではない
不動産は「高く売れたら成功」——そう単純なものではありません。売却した後、その資金で同じだけ利益を生む物件を購入できるでしょうか。現在の市場では、同じ条件の築浅物件を取得することは以前より難しくなっています。
だからこそ私はいつも「今売る理由」だけでなく、「売った後の戦略」まで考えるようにしています。
いくらで売れるかではなく、
いつ売ることが、最も価値があるか。
AI不動産戦略会議でも、この視点を
今回開発している「AI不動産戦略会議」でも、単純に査定価格が高いから売却、という提案にはしたくありません。AIには、次まで含めて保有と売却を比較する仕組みを作りたいと考えています。
売却益が出る場面でも、家賃の成長余地・高いNOI・小さい修繕リスク・都市計画の将来性があるなら、保有継続の方がトータルリターンで上回ることがあります。売却は「高く売れたら成功」ではなく、売却後にその資金が同等の価値を生めるかまで含めた判断です。重要なのは「いくらで売れるか」ではなく「いつ売ることが最も価値があるか」です。
この事例が参考になる方
- 売却を検討している収益不動産オーナー
- 築浅一棟物件を保有している方
- 都心物件を保有している方
- 保有と売却で迷っている経営者
- 長期的な資産形成を考えている方
売るか持つかを、数字で見極める。
家賃の成長性・NOI・修繕リスク・都市計画・再投資まで含めて、保有と売却をDCFで比較します。「今売るべきか」を一緒に見える化しましょう。
保有・売却の相談をする※本記事は実例をもとに再構成したものであり、数値は例示です。将来の家賃・NOI・都市計画・価格は保証されるものではなく、市況により変動します。実際の判断は専門家にご相談ください。