越境でもめる話。
境界線は「土地の価値」そのものを左右する
「たった1.5坪」——そう思うかもしれません。
しかし駅近商業地では、その1.5坪が事業計画を変えます。
土地売却では、越境や境界未確定の問題が、価格だけでなく売買契約の成立や開発計画そのものに影響することがあります。特に駅近商業地では、わずかな面積差でも建築可能な延床や事業収支を左右します。境界確定は資産価値を守る経営課題。今回は、ブロック塀が境界だと思っていたら1.5坪ずれていた実例です。
確定測量は、ただ面積を測る作業ではありません。
土地を売却する際、特に大手デベロッパーや建売業者へ売却する場合には「確定測量」が条件になることが少なくありません。確定測量は、隣地所有者や道路管理者と境界を確認し、将来のトラブルを防ぐための重要な作業です。
- 境界標の確認
- 筆界確認書の取得
- ブロック塀の所有権
- 越境物の整理
- 将来撤去に関する覚書
ブロック塀が境界線だと思っていた
東京都内の駅近商業地で、大手デベロッパーへの土地売却をお手伝いした案件でした。売却前に確定測量を行ったところ、境界線とブロック塀の位置が大きくずれていることが判明しました。境界線とは、境界標と境界標を結んだ法的な線です。ところが現地のブロック塀は、その境界線より売主側へ大きく入り込んでいました。
隣地の所有者様へ相談すると、「約30年前に土地を購入した時、ブロック塀の内側が境界だと説明を受けた」とのこと。悪意があったわけではなく、その認識で長年、庭の一部として利用されていたのです。しかし実測すると、その差は約1.5坪もありました。
商業地では、1.5坪が事業計画を変える
一般住宅なら「1.5坪くらい…」と思われるかもしれません。しかし今回は駅近の商業地域。買主は大手デベロッパーで、商業ビルの開発を予定していました。商業地では、わずかな面積の違いが事業計画そのものを左右します。
延床面積
区画
計画
の配置
の消化
問題の約1.5坪も、開発計画や事業収支に影響する重要な面積でした。当然ながら全ての隣地から筆界確認書を取得することが決済条件で、取得できなければ売買契約を進められませんでした。
筆界と所有権界は違う
少し専門的な話です。法務局には筆界特定制度があります。ただ、この制度で判断されるのは「筆界」。一方、土地の所有権がどこまで及ぶかという所有権界とは、必ずしも一致しません。
もともとの土地の境。筆界特定制度で明らかにできる。
実際に所有権が及ぶ範囲。占有の経緯などで筆界とずれることがある。
つまり、筆界が明らかになっても「この土地は誰のものか」という争いが解決するとは限らないのです。
時効取得という主張
今回、隣地の所有者様は約30年間その土地を庭として利用し、時効取得についてもご存じでした。民法では一定の条件を満たした場合、長期間占有していた土地について所有権を取得できる可能性があります。もちろん、実際に成立するかは占有状況や経緯などを総合的に判断する必要があり、簡単に結論が出る問題ではありません。
最終的には、分筆という選択
協議を重ねた結果、最終的には約1.5坪を分筆し、その土地を売主から隣地所有者へ譲渡することで解決しました。
確定測量でズレが発覚
境界線とブロック塀が約1.5坪ずれていることが判明。
隣地所有者と協議
30年の利用経緯、時効取得の主張も踏まえて話し合い。
約1.5坪を分筆
問題の部分を分筆し、売主から隣地所有者へ譲渡。
筆界確認書を取得し決済
売買を止めずに、現実的な形で解決へ。
もちろん、測量費・分筆登記費用・登録免許税・各種手続費用など、新たなコストも発生しました。
しかし、裁判や長期化する紛争、そして売買自体が止まるリスクを考えれば、現実的な解決方法だったと思います。
境界は、売る時ではなく持っている時に確認する
こうした問題は、売却時に初めて発覚することが少なくありません。しかし本来は、保有している間に整理しておくべき問題です。早めに確認しておくだけで、将来の売却は大きく変わります。
境界は、資産価値そのもの
一般の方からすると「たった1.5坪」と思われるかもしれません。しかし駅近の商業地では、その1.5坪で建築できる床面積が変わり、テナント計画が変わり、事業収支が変わることもあります。境界線は単なる線ではなく、土地の価値そのものです。
境界や越境は測量の話ではなく、
資産価値を守るための経営課題。
AI不動産戦略会議でも、重要な判断項目
今回開発している「AI不動産戦略会議」でも、境界や越境に関する情報は重要な診断項目として取り入れる予定です。次のような点を評価し、売却・保有・土地活用など、それぞれの戦略をAIが多角的に提案できる仕組みを目指しています。
土地売却では、越境や境界未確定の問題が価格だけでなく、売買契約の成立や開発計画そのものに影響することがあります。特に駅近商業地では、わずかな面積差でも延床や事業収支に響くため、境界確定は資産価値を左右します。また筆界と所有権界は法的に異なり、時効取得が争点となる場合もあるため、測量・法律・実務を総合的に踏まえて解決策を検討する必要があります。
この事例が参考になる方
- 土地の売却を検討している方
- 商業地や開発用地を保有している方
- 相続した土地を保有している方
- 境界確定を行ったことがない方
- 越境物が気になっている土地所有者
その境界、売る前に整えておく。
境界標・越境物・覚書の確認から確定測量まで、保有中のうちに資産価値を守る準備を一緒に進めます。売却時のトラブルを未然に防ぎます。
境界・越境の相談をする※本記事は実例をもとに再構成したものであり、数値・面積は例示です。境界確定・筆界特定・時効取得・分筆等の取り扱いは個別事情により異なります。実際の対応は土地家屋調査士・弁護士等の専門家にご相談ください。